立ち止まる(抑制)
アレクサンダー・テクニークを学ぶ上で、
「抑制(インヒビション)」はとても重要です。
しかし、テクニークを学び始めてから20年以上が経ち、そして教え始めてもなお、
その重要性を、私は本当には理解できていなかったようです。
My work is about inhibition, the inhibition toward my reaction to a stimulus which puts always wrong and to learn to deal with it.
By F.M. Alexander
私のワーク(アレクサンダー・テクニーク)は、「抑制」がテーマです。
その「抑制」とは、私たちを常に間違った方向に向かわせる刺激に対する自分の反応を抑制し、
それにどう対処するかを学ぶことを目的としています。 F.M.アレクサンダー
つまり、アレクサンダー・テクニークとは、「抑制」を学ぶことと言っても過言ではない、
というより創始者自身がそうだと言っているのに、です。
改めて、それをはっきりと自覚できたのは、
The Poise Projectというアメリカのアレクサンダー・テクニーク教師の集まりで、
パーキンソン病とともに生きる方々のためのアレクサンダー・テクニーク、として、
有名なマイケル・J・フォックスの財団を一として3つの団体から助成金を受け、
大学などと協力してその成果をデータ化しつつ、開発されたがプログラムがあります。
アメリカではパーキンソン病とともに生きる方たちのリハビリテーションとして、
アレクサンダー・テクニークが取り入れられているところもあります。
私は理学療法士などの医療にかかわる資格は持っていないので、
「ケアパートナーのためのアレクサンダー・テクニーク」という
パーキンソン病とともに生きる方のご家族など、
専門家でないにもかかわらずご家族のケアに当たられている人のために
日々、アレクサンダー・テクニークをどう活かしていただくか、
というAT教師のためのトレーニングを受けたことが、
「抑制」の重要性を改めて学び、理解するきっかけとなったのです。
そのコース(全10回)の第一回のテーマが、「I am」です。
日本語にするのが難しいこのテーマが最初にある、ということ、
受講された方々が、最初は抵抗感を覚える人がありながらも、
このテーマが一番手助けとなったと答えられるもの、
それは、ケアする人となった途端、
「我(われ)」を無くしてしまう人が多いから、というのも一つの理由だそうです。
「I am」とは、
「我に返る」と訳してもいいのではないか、と私には思えてきました。
Pause. ・・・立ち止まる
という練習から始めます。
とてもシンプルなこの練習は、
10回のコースを進めるうえでとてもパワフルなものに変わっていきます。
「我(われ)」を無くしてしまう、という状態には
実は、ケアパートナーだけでなく、私たちは無自覚に陥っています。
例えば、PC作業をしている時、作業(Doing)に没入して、
「私」の存在(Being)を無くし、氣がついたら”疲れている”というようなことです。
ケアパートナーは、ケアする人に意識が集中し、
「我(われ)」のケアは後回しになっている、という状態です。
ポーズ、と立ち止まり、
一息ついてみましょう。
我に返って、「私」が今、どんな状態なのか、
に注意を向けてみましょう。